1952年に誕生したギブソン・レスポール・モデルは、ギター・シーンを代表する人気モデルであることは、言うまでもない。
しかしこのモデルの誕生には、ギブソン社ならではの様々な思惑があった。

1950年代初頭、ギブソンではすでにピックアップを搭載したアーチトップ・モデルを発売していたが、フェンダー社から1950年に発売された新しいスタイルのエレクトリック・ソリッド・ギター、ブロードキャスター(テレキャスター)の登場には驚異を感じていた。
1902年創業のギブソン社としては、フェンダーとは異なるアプローチで、しかもテレキャスターを上回る完成度と高級感を持ったモデルの開発が強く求められた。
そこで白羽の矢が立ったギタリストが、レス・ポールだった。彼は以前からサステインの優れたソリッド・エレクトリック・ギターの必然性を唱えており、ギブソンへのアプローチもあった。
またジャズ、ポピュラー・シーンでは、かなりの知名度と人気を誇るギタリストだった。
レスポール・モデルは、ギブソン初のソリッド・ギターであると同時に、初のシグネチャー・モデルとして華々しく登場した。

レスポール・モデルは当時のアーチトップ・ギターをそのままコンパクトにリサイズしたカッタウェイ・ボディが採用され、グラマラスなボディトップはゴールドにフィニッシュされていた。
このカラーリングは当時としてはかなり斬新であるが、レスポールがそれを強く希望したのと同時に、マホガニーとメイプルからなるボディの2重構造を隠す意味合いもあったようだ。
また、ボディにはレスポール最大の特徴でもある優雅なアーチトップ加工が施された。
この立体的で流れるような加工は、当時フェンダー社の工作設備では行うことができず、セットネックと共にギブソンの高い技術力と完成度をアピールする狙いがあった。
しかし、板材をルーターで加工したボディと、ネックを別々に作ってボルトでジョイントするという合理的なフェンダー・スタイルとは異なり、熟練のビルダーが時間を掛けて作業を行うことが必須となるため、生産性の悪さがつきまとう結果ともなった。

1959 GIBSON Les Paul Standard
1959 GIBSON Les Paul Standard
1957 GIBSON Les Paul Model
1957 GIBSON Les Paul Model

ギブソンは、その後華やかなサンバースト・フィニッシュの採用やハムバッカー・ピックアップの搭載等、様々な魅力的なアイディアをレスポールに導入していくが、生産性の問題はいつまでもつきまとっていた。
結果的に1961年、レスポールはより生産性の良いSGスタイルにフルモデルチェンジすることで、効率の良いギター作りにシフトしていく。
そして誕生したSGモデルは、60年代に生産されたギブソン・ラインナップの中で、最も数多く生産・販売されたモデルへと成長していったのである。