ヴァイオリンやチェロなどクラシック系の弦楽器を見ると、弦楽器のスケールと楽器が奏でる音域には深い関係があることは大方想像がつくだろう。
ヴァイオリンは、解放弦の4弦から1弦に向かって、G/D/A/Eに5度チューニングされ、スケールは約325mm。
一回り大きなヴィオラはC/G/D/Aに5度チューニングされ、スケールは約358~375mmに設定されている。
さらに大きなチェロはヴィオラよりも1オクターブ低いC/G/D/Aに5度チューニングされ、スケールも2倍近い長さの約680mm前後である。
最も大きなコントラバス(アップライト・ベース)はE/A/D/Gに4度チューニングされ、スケールは約1012mmとかなり長くなっている。
スケールが長いということは、そのまま共鳴体であるボディのサイズ(容量)も大方比例して大きくなり、また弦も太いものを使用することで、その音域に適したサイズや構造の楽器が製作されているわけだ。
クラシックなどのオーケストラでは、より豊な低音域から美しい高音域まで、幅広い音域を各パートに合った楽器を配置することで、みごとなアンサンブル演奏を可能にしている。

スケールの長さと音域との関係は、弦楽器に限ったことではない。
サックスなどの木管楽器にも同じような傾向があり、音域が異なる幾つかのバリエーションがある。
受け持つ音域で大別すると、高い方からソプラノ・サックス、アルト・サックス、テナー・サックス、バリトン・サックスの4種類は、奏でる音域と楽器のサイズが異なる。
さらにクラリネットに至っては、もっと細かく分けられており、高い方から、A♭ソプラニーノ・クラリネット、E♭ソプラニーノ・クラリネット、Dソプラニーノ・クラリネット、Cソプラノ・クラリネット、B♭ソプラノ・クラリネット、Aソプラノ・クラリネット、E♭アルト・クラリネット、Fバセット・ホルン、B♭コントラバス・クラリネット、など10種類前後のバリエーションがある。
これらは基本的な構造は同じであるが、管の長さや太さが異なることで、奏でる音域が異なってくる。

音の高さを決めるのは振動数であるが、人間の場合も背の低い人は高い声、背の高い人は低い声の傾向がある。
これは空気を振動させる声帯などの発声器官の大きさや長さ、形状などが振動数に関連していることによるものである。
弦楽器の音の高さと管楽器の音の高さとでは、本来根本的にその原理が異なるようだが、人間の声の高さも含めて「同じような原理じゃないの?」と考えてしまうのは、いささか乱暴だろうか?