ルシアーによるハンドメイド・ギターは、製作者のギターに対する考え方やコンセプトがそのまま現れ、仕上げの美しさや手の混んだ装飾等、プレイヤーとしてまたギターのオーナーとして、特別な満足感を与えてくれる。
しかし、これとは真逆なギター・デザインを追求し、素晴らしいギターを完成させた歴史的人物がいる。
それはレオ・フェンダーである。
レオのギター・デザインは、それまでのギター製作家とは根本的に異なり、全く独自な考えに基づいたギター哲学とも言える。
では、そのレオのギター哲学とはいかなるものなのだろう。

「ドライバーで組み立てるギター製作」
レオの革命的なアイディアはいくつもあるが、ギターをパーツの集合体と考え、それらをネジとドライバーで組み立てるという考え方は、これまでのギター製作を根本から覆した。
それまでは熟練のビルダーでなければ作ることができなかったギターを、熟練者でなくてもギターが作れることを可能にした。
レオ・フェンダーのデザインしたギターは、全てネックとボディがボルトでジョイントされている。
これは単に生産性を高めるだけではなく、ネックに致命的なダメージが発生した場合でもネックを交換することで容易に修理ができることまでを見越した仕様だった。

「いくつもの機能を併せ持ったパーツ」
ストラトキャスターのピックガードを見て欲しい。
ピックガードにはピックアップが3つマウントされ、ヴォリュームやトーン、さらにはピックアップ・セレクターまで搭載されている。
こうすることで、パーツの数を減らすと同時に、ボディの加工と配線などの作業が別々のラインで行えるため、極めて生産効率が良くまた原価を抑えることもできる。
各モデルのメイプル・ネックにしても、フィンガーボードが無くネックに直接フレットを打つという斬新なアイディアは、レオならではである。
彼は常に生産効率を考えながらギターをデザインしていた。

「ストリング・プル・デザイン」
レオがデザインしたギターやベースには、必ず「ストリング・プル・デザイン」が採用されている。
これは、チューナー・ポストからナット、ブリッジ・サドル、テイルピースに至まで弦が一直線になっているデザインのこと。
あまり気づかないかも知れないが、エレクトリックでもアコースティックでも、フェンダー・タイプを除けば弦が一直線にデザインされているギターはあまり無い。
こうすることで、トレモロユニットを使用した際にチューニングが安定すると同時に、楽器全体に弦振動が伝わりやすくなり豊かなサステインとトーンを生み出す要因になっている。

改めてレオ・フェンダーの考案したギター・デザインを振り返ってみると、その功績の大きさと影響力に驚くばかりだ。
レオが常に追求していたのは機能性であり生産効率であるが、楽器として不要な装飾類を一切切り捨て磨き抜かれたその機能的なギターには、道具としての美しさが溢れている。