ギタリストが初めてウクレレをチューニングした時、「なかなか音程が合わない!」と思ったことはないだろうか?
ウクレレはギターと比べると極端にスケールが短く、ギターと同じ感覚ではチューニングはできない。
またベグの構造そのものがギターとは基本的に大きく異なっており、ウクレレにはウクレレ専用のペグある。
今回はそんなウクレレのペグについて考えてみよう。

ウクレレのペグ(チューナーもしくはマシンヘッドとも呼ばれる)には、大きく分けて2つのタイプがある。
ひとつは、ヘッドを正面から見たときにチューナー本体とボタン(ツマミ)が隠れて見えないタイプ。
これはヘッドを横から見るとよく分かるが、ボタンは本体の軸(ストリングポスト)の後方に付いており、ヘッド正面からはストリングポストしか見えない。
これはフリクション・ペグ(もしくはストレート・ペグ)と呼ばれるタイプで、ボタンと本体の軸とが摩擦(フリクション)によって同期している。
ボタンが1回転すれば本体の軸も1回転するというシンプルな構造だが、僅かに回すだけでも音程が大きく変化するので、チューニングには慣れが必要だ。
これは1920年代半ば以降から多くのウクレレに使用されており、現在もマーティン社を始め多くのブランドの製品に採用されている。
バンジョーで使用されるペグもこのタイプが多く、バンジョー・ペグなどとも呼ばれることもある。

もうひとつはギターに使用されているのと同じギア・ペグ。
これはヘッド正面から見るとペグボタンが両側に飛び出ているので一目で分かる。
このタイプはボタンの軸と本体の軸との間にギアが噛んでいて、ボタンを1回転させるとストリングポストは1/14回転する構造である。
ギア・ペグ・タイプのウクレレは2000年頃から普及し始め、特にギターとウクレレの両方を生産しているブランドや新しい製品作りを目指しているブランドなどは、ギア・ペグを採用しているところが多い。
特徴としては、ギア比が1対14なのでギターと同様に微妙なチューニングが可能となる。
近年は、元々フリクション・ペグだった製品をギア・ペグに交換しているプレイヤーは少なくない。

では、なぜ現在もチューニングに手間のかかるフリクション・ペグを搭載したウクレレが数多く生産されているのだろう?
ハワイアン・ミュージックが世界的に大流行した1920~30年代。
当時生産されていたウクレレの多くは、ヴァイオリンや三味線のペグと同じボタンと軸が一体型の木製(もしくはプラステック製)のフリクション・ペグだった。
1930年代になり、より繊細なチューニングができる現在のフリクション・ペグ(モダン・ペグ)が登場し、一体型木製フリクション・ペグは徐々に姿を消していった(現在でもこの一体型木製ペグに拘るブランドはある。また、60年代まで廉価な製品には一体型のペグが数多く使用されていた)。
本来ウクレレはシビアなピッチに拘る楽器ではなく、もう少しおおらかな感覚で演奏を楽しむプレイヤーが多かったことがその理由のひとつだろう。

また近年は、フリクション・ペグもかなりチューニング精度が上がり、こつを掴めば問題なく安定したチューニングが可能になっている。
しかし、他の楽器とのアンサンブルやよりシビアなピッチが求められる状況も増えていることも事実で、ギア・ペグを採用したウクレレは一般的になった。

それから、フリクション・ペグはギア・ペグと比べて軽量である。
ギターと比べてウクレレは圧倒的に本体が軽く、それにギターで使用されるギア・ペグを取り付けると、ヘッドが重くアンバランスになると同時に、トーンにも変化がある。
チューナーとしての精度だけを考えれば、ギア部分をカバードにしたロトマチック・タイプが最も合理的だが、一般的なオープンのギア・ペグより更に重くなることもあり、意外に愛用者は少ない。

そしてもうひとつ考えられるのは、外観的な要素もあるようだ。
フリクション・ペグは伝統的なスタイルであるため、トラディョナルなデザインを好むプレイヤーの中には、ギア・ペグの外観はウクレレらしくないと考えるプレイヤーもいるようだ。
しかしこれはあくまで個人的な好みの問題が大きく、ギターとウクレレのどちらも弾いている多くのプレイヤーなどはまったく抵抗が無く、利便性も含めギア・ペグを好んでいるプレイヤーは多い。

次回のコラムでは、そんなフリクション・ペグに関して、もう少し深く考えてみたい。

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