ギブソン・レスポール・モデルは、ギブソン社初のエレクトリック・ソリッド・ギターであり、初のシグネチャー・モデルとして広く知られている。
しかし、実はそれ以前にもギブソンはエレクトリック・ソリッド・ギターをいくつも発売していたことをご存知だろうか?
しかしそれらは、一般的な抱えて演奏するギターでは無く、膝の上に寝かせ左手に金属製のバーを持って演奏するエレクトリック・ラップ・スティールやエレクトリック・ハワイアン・ギターと呼ばれるスライド専用ギターだった。
今回は、そんなちょっと変わったギブソン・エレクトリック・ギターを紹介しよう。

1993年に音楽雑誌『プレイヤー』の別冊として発刊された『RARE GUITAR MUSEUM』というギター写真集に、歴史的なギブソン・スティール・ギターが掲載されている。

これらは、1930年代半ばから1940年代前半に生産された製品で、ハワイアンの音楽シーンで使用された。
1930年代はアメリカを中心に世界的なハワイアンブ-ムが巻き起こっていた。
しかしPAなどの音響設備がまだ充実しておらず、コンサート会場が大きくなるに連れてより大きなサウンドが求められていた。
ミュージシャンは少しでも大きなサウンドで演奏するために、それまでのワイゼンボーンやナショナルといったアコースティック・ハワイアン・ギターに代わり、当時登場したはかりのエレクトリック・ハワイアン・ギターを使用するようになった。
それらに続いて1950年に登場したのが、フェンダー・ブロードキャスターだった。
そしてその2年後にギブソンから登場したエレクトリック・ソリッド・ギターが、レスポール・モデルである。
今回紹介するスティール・ギターは、ある意味でレスポールが誕生する布石となったモデルとも言える。

写真は、EH-150というギブソンを代表するスティール・ギターのシリーズ(EH:エレクトリック・ハワイアン)。
ヘキサゴン・スタイルのピックアップ、ギブソンらしいヴィンテージ・サンバースト・フィニッシュを採用し、ボディには白いバインディングが施されている。

向かって左にある製品が、EH-150 ダブルネック・エレクトリック・ハワイアン(8弦 / 8弦)。
その右側がカスタムオーダーで製作されたエレクトリック・テナー・バンジョー(4弦)。
その下が、EH-150 13ストリング・カスタム ・エレクトリック・ハワイアン(13弦)。
中央上がEH-150 ラップスティール・エレクトリック・ハワイアン(6弦)。
右の四角いダブルネック・スティール・ギターがコンソール・グランド D8(8弦 / 8弦)。
EH-150シリーズは基本的に木製ボディだが、アルミニウムのボディ / ネックを採用したモデルも存在した。
各ギターの後ろに見えるレトロ感満載のアンプは、同じネーミングのEH-150 アンプリファイアーで、当時ギターと一緒に発売され、セットで使用された。

現在はあまり楽器店で見かけることがないラップ・スティール・ギター。
これら過去の製品を見ると、当時時代のニーズに呼応しながら新たな製品作りを積極的に行っていたギブソン社の姿が見えてくる…。