「ギブソン」と「フェンダー」。
この2大ブランドは、エレキギター市場において、双璧と言われている。
ギブソン社の誕生は1902年で、当初からハンドメイドの素晴らしいマンドリンやギターを製作していた。
それに対して、フェンダー社が世界初の量産型ソリッド・エレクトリック・ギターであるブロードキャスターを発売したのが1950年(1946年からスティール・ギターを発売)。
どちらのブランドの方がより素晴らしいとは言えないほど、この両ブランドはいつも我々を魅了している。
ギブソンとフェンダーでは、単にデザインやサウンドが異なるだけではなく、ギター作りに対する根本的な考え方が大きく異なっている。
今回は、その両ブランドの基本的なコンセプトの違いについて考えてみよう。

ギブソン社の創始者であるオービル・ヘンリー・ギブソンは、1800年代末からアーチトップのマンドリンやギター製作し、1902年の創立時からハープ・ギターなど、ルシアーならではの削り出しボディのモデルを製作していた。
それに対してレオ・フェンダーは、板材をカットしてボディを作り、ネックをボルトで止めるという極めて合理的なギター作りからスタートしている。
しかもボディ材には、それまで家具に使用されていたアッシュやアルダーを使用するという荒技をやってのけた。
レオはギターを伝統的な楽器として捉えるのではなく、いかに合理的で機能的な製品が作れるか、という観点からギターをデザインしていた。

ギブソンの代表モデルである、レスポール、ES-335、フライングVは、ボディのデザインや構造が異なり、それぞれ特徴的なオリジナル・モデルとして完成している。
しかし面白いことに、搭載されるピックアップ、ブリッジ、テイルピース、コントローラー類は、モデルに関わらず同じモノが流用されている。
かたやフェンダーは、テレキャスター、ストラトキャスター、ジャズマスター、ジャガーなど、ボディデザインも然ることながら、ピックアップ、コントローラー、ブリッジやトレモロユニットなど、金属パーツやアッセンブリをモデルごとに独自に開発している。
これは、ギブソンがボディの形状や構造で新たなモデルを作り出すのに対して、フェンダーはエレクトリック・アッセンブリを新たに開発することで、新しいモデルを作りだすという考え方に基づいたものである。

ギブソンのレスポール・スペシャル、レスポール・スタンダード、レスポール・カスタムなどのラインナップは、基本的な仕様は共通だが装飾類を変えることでバリエーションやグレードを作り出している。


それに対してフェンダーは、1モデル1グレードが基本で、装飾類は施されていない。

フェンダー『ストラトキャスター』

この2つのブランドは、1950年代以降世界のエレクトリック・ギター・シーンを牽引してきた。
しかし、その両社の物作りに対する考え方は根本から異なっていた。
ギターを嗜好品として捉えることで、デザインや仕上がりの美しさ、装飾にも拘り、常に高級感を演出するギブソン。
かたや機能性を追求すると共に、製品をいかに合理的に生産するかを突き詰めることで、機能美にたどり着いたフェンダー。
お互いに自分達のあり方を信じることで我が道を進んできた姿が現在である。
ギブソンはギブソン、フェンダーはフェンダー。
その価値観の違いがいつも多くのギター・ファンをワクワクさせてくれる。