1999年にニューヨーク・クリスティーズで行われた、エリック・クラプトンの「クロスロード・ギター・オークション」を皮切りに、有名ロック・アーティストが自分の愛用した楽器やコレクションをオークションで競売し、高値で落札されたニュースが報じられることがある。
以前このコラムでも、デイヴ・ギルモアのブラック・ストラトがギター・オークション史上最高額となる4億2千万円で落札された話を紹介した。
今回紹介するのは、2003年に行われたザ・フーのベーシスト、ジョン・エントウィッスルにまつわるオークションの話。

ザ・フーと言えば、ビートルズ、ローリング・ストーンズと並び英国が生んだ最も偉大なビートロック・バンドとして知られるが、ジョン・エントウィッスルは60年代初頭のバンド結成時からのオリジナル・メンバーとして活躍した。
ザ・フーは、世界的に高い評価と人気を誇り、アルバム『トミー』や『四重人格』などいくつもの名作を世に送り出したが、鬼才ドラマーとして名高いキース・ムーンの他界や、ピート・タウンゼンドの脱退などもあり83年にバンドは解散(85年に再結成)、多難な運命をたどったことでも知られている。
ジョンは「ロック史上最高のベーシスト」と称されながらも、全米ツアーの前日となる2002年6月27日に、ラスベガスのホテルで急死している。
ジョンはフェンダー・プレシジョン・ベースやギブソン・サンダーバード Ⅳ、アレムビックなどを中心に様々なタイプのベースを愛用し、楽器コレクターとしても知られている(ジョンのベース・コレクションを紹介した写真集『Bass Culture The John Entwistle Guitar Collection』も発刊された)。
オークションはジョンが他界した翌年3月にサザビーズで開催され、そのマニアックなコレクションぶりには多くのファンも驚いた。

「ザ・ジョン・エントウィッスル・コレクション」とタイトルされたオークションで競売された彼の遺品は、なんと386点!
80本近いベース・コレクションを始め、それに近い数のヴィンテージ・ギターやレア・ギター、スティール・ギター、多数の管楽器類、数十枚のゴールドディスク、ステージ衣装、腕時計、装飾品、動物や魚の剥製、ジョンの描いたロック・ミュージシャン達の絵画やイラストなど、彼が愛したコレクションの数々が次々と出品され、競売にかけられた。
楽器に関しては、彼が歴代愛用したベースはもちろんのこと、シグネチャー・モデルや超レア・モデル、歴史的なヴィンテージ・ギターなど多岐に亘っており、ジョンの楽器に対する深い愛情と拘りが伝わってくる。

それでは、競売されたコレクションの中から、いくつかの珍しい楽器に絞って紹介しよう。
写真はこのオークションのために制作されたサザビーズの専用カタログより。

オークションの際に製作されたサザビーズの専用カタログ
いくつかのパーツを組み合わせたフェンダー・プレシジョン・ベース
よく愛用した1964年製ギブソン・サンダーバード・ベース Ⅳ
1980年製アレムビック・エクスプローラ・スタイルのカスタム・ベース
アレムビック、フライング V ベース、オーバーウォーター C ベース
左はピーター・コーク・ギターズのエクスプローラーバード・ベース
オリジナルの1958年製ギブソン・エクスプローラ!
なんと1958年製ギブソン・フライングVも出品された