伝説のロック・バンド、レッド・ツェッペリンのベーシストとして知られるジョン・ポール・ジョーンズは、ベースだけでなく、ピアノ、ギター、バンジョー、マンドリン、スティール・ギターなど、なんと25種類もの楽器を演奏するマルチ・プレイヤーである。
今回はジョンがツェッペリン時代から愛用している有名な弦楽器を紹介しよう。

 写真は、アンディ・マンソンが製作したカスタム・トリプル・ネック・ギター・マンドリンで、ツェッペリン・ファンにはおなじみの楽器である。
マンソンは2人のマンソン兄弟を中心としたイギリスのギター工房で、兄のアンディ・マンソンが主にアコースティック弦楽器、弟のヒュー・マンソンがソリッド・エレクトリック弦楽器を製作している。

 写真のトリプル・ネック・ギター・マンドリンが最初に人前で使用されたのは、70年代後半のレッド・ツェッペリンのステージだった。
トリプル・ネック・ギター・マンドリンを自在に弾き熟すジョン・ポール・ジョーンズの凛々しい姿は、ツェッペリンというバンドの奥行きの深さをアピールするとともに、ジョンのミュージシャンとしての豊かな才能を多くの人に知らしめた。

 特別大きなボディには3本のネックがセットされており、年配の方であれば東宝映画『三大怪獣 地球最大の決戦』(1964年公開)に登場したキングギドラをイメージする人もいるだろう(なんとなく色も似ている…)。
スプルース・トップ、メイプル・バック&サイドを採用し、杢目の美しさも格別だ。
中央が12弦ギター、右側に6弦ギター、そして左側に一回り小さなマンドリンが配置されている。
ギターのネックはマホガニーを主体としてメイプルとの9ピース仕様で、マンドリンは5ピース、フィンガーボードは全てエボニーを使用している。
チューナーは全てシャーラーのM6タイプだが、軽量化を図ってナイロン製のギアボックスが採用されている。
また、各ネックのナット部には使用していないネックが共鳴しないようにミュートダンパーが取り付けられている。
各ネックのフィンガーボード全面には英国らしいデザインの豪華なインレイが施されているが、このギターが完成した70年代にはこのインレイは見られず、後から追加した装飾である。
ボディ裏側には、ツェッペリン時代のJPJのシンボルマークが、いくつもの素材を用いて大きくインレイされている。
かなり個性的なボディ形状だが、ブレイシングはXタイプを採用。

 ジョン・ポール・ジョーンズは様々な弦楽器を演奏するが、ギターやベースは4度チューニング、マンドリンは5度チューニングであるため、チューニングが根本から異なる。
ギターとベースをどちらも演奏できるミュージシャンは少なくないが、マンドリンが弾けるベーシストというのはあまり訊いたことがない。

 このトリプルネックのギター・マンドリンはJPJのために製作されたものだが、ジミー・ペイジもよく似たトリプル・ネック・マンソンを所有している。
その他にも日本からのオーダーで製作されたことがあるようだ。